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最高裁判所第一小法廷 昭和30年(あ)2427号 判決

本籍並びに住居

岡山県久米郡大井町坪井下一七六九番地

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安藤敬

明治四三年一二月一四日生

右に対する公職選挙法違反被告事件について、昭和三〇年七月二一日広島高等裁判所岡山支部の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人藤井滝夫の上告趣意第一点、第二点は判例違反をいうが、記録によれば、第一審においては、弁護人は所論供述調書の内容が信用できないことを理由として、証拠とすることに異議を申立てたのであり、右異議は、原本の存在を争つたり、謄本なるが故に証拠能力がないと主張したものではないことが認められる。従つて、被告人が本件につき控訴審において申立た控訴趣意第一点において「而も右は謄本であつて、弁護人に於て謄本を証拠とすることに対し異議を述べており原本の顕出もなされていないものであるから証拠となし得ないものである」というのは、第一審において主張のなかつた事項を恰も主張したもののごとくいうのであり、第一審判決の攻撃としては前提を欠くものである。そして第一審が本件供述調書の謄本の内容を措信するに足るものとしてこれを証拠に採用したことには違法は認められない。原審がこの点に関して示した所論のような判断には、是認し難い点がないことはないが、上記の理由により、それは結局原判決の結果には影響のない説示であり、所論はこの点を攻撃するものであるから、採用できない。同第三点は事実誤認、これを前提とする法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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